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2005年10月30日 (日)

科研費の申請書提出

こんにちは。三浦です。すっかり秋らしい気候になってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は好物のサンマの塩焼きや栗ご飯、焼き芋などを食べ過ぎて少し太りそうです。

ところでようやく平成18年度科研費の研究計画調書を書き上げました。明日提出します。研究課題名は「遠赤外吸収分光を用いた分子間振動の直接観測によるソフトマター中の動的水構造の解明」。研究種目は若手研究(B)、分野・分化・細目は数物系科学・物理学・ソフトマターの物理。

せっかくの機会なので、私の研究テーマをできるだけかみくだいて説明してみます。そもそも現在私が専門としている「水の構造」とは何なのか?というところから始めましょう。

ご存知のとおり、水分子は一つ酸素原子と二つの水素原子からできていています。この分子の内部では、水素が正電荷を、酸素が負電荷を帯びて電気的な偏り(極性)が生じるため、近くに極性をもつ他の分子があると静電気的な力で引き合って結合します。(これを水素結合という。)一つの水分子は最大四つの水素結合の手をもつので、液体中の水分子は隣りあった他の水分子と結合して分子のかたまり(クラスター)を形成します。このような分子集団の形状を「水の構造」と呼んでいます。

このような水構造(もっと一般的には液体構造)の特徴は、分子のミクロブラウン運動によって常に揺らいでいることです。固体の結晶のように分子が規則正しく並んでいるものではないので、構造を決定することが簡単ではありません。1960年代にX線構造解析とラマン分光で初めて水に構造があることが見つかりました。このときはむしろ、液体に規則性があるということが驚きだったようです。以来このテーマは活発に研究され、蒸留水のように純度の高い水の場合は、5個から6個の分子が集団を作っていることがわかっています。ところが溶液中では、溶質分子が水分子と水素結合をしたり、水分子間の水素結合を邪魔したりすることで構造が複雑になります。そのため構造決定はますます難しい問題となり、現在でもすっきりと解決されていません。

私は立命館大に来てからの約3年間で、液体を測ることができる、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)という名前の遠赤外線用の分光器を立ち上げました。細かい説明は省きますが、試料に遠赤外線を当てて、どの周波数でどのくらい光が吸収されるかを調べる装置です。遠赤外線は、水素結合している分子の間での振動や、大きな分子全体の振動(コレクティブモードといいます)などが原因で吸収されると予測されています。そこで実験で得られる吸収スペクトル(吸収率の周波数依存性)を解析して分子集団に関する情報を取り出そう、というのがねらいです。技術的な理由で従来難しいとされてきた測定ですが、ようやく最近になって液体中の分子間振動を観測することに成功しました。このような水溶液の分光測定に関しては、現在のところ、世界的に見てもほとんど例がないものです。

この装置を利用して、水溶液やゲル、コロイドなどの水を含む物体中での分子集団の振る舞いを調べること、これが今回申請した研究のテーマです。研究計画には、試料の温度を90℃から液体窒素温度(-200℃)の間で調節できるようにすること、コンピューターで分子運動のシミュレーションをして実験結果と比較できるようにすること、などが盛り込まれています。せっかくうまくいき始めた研究なので、今回の応募で科研費を得て、ぜひ継続したいと考えてます。

それではまた。

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