平成19年度科研費の申請
今年も文科省に科学研究費補助金(科研費)の申請を行った。平成19年度以降の研究計画書を書いたのだが、国内のどこかにポジションがあるという前提である。無駄になるかもしれないが、将来の可能性を少しでも見逃すことはできない。
種目は萌芽研究で、題目は「遠赤外吸収分光法を用いた非平衡状態における分子集団のダイナミクスに関する研究」である。分野・分化・細目は数物系科学・物理学・化学物理。
せっかくなので、今年も内容を少しだけ説明してみる。
光は波の性質を持つので、波長という尺度で分類する。これは山と谷がある波1個分の長さである。例えば、X線の波長は10オングストローム(百万分の1mm)程度、可視光(人が見ることができる赤色や青色の光)では数百ナノメートル(1万分の1mm)程度、FMラジオの電波は1m程度といった具合である。私が研究で扱っている遠赤外線の波長は、0.1mm程度である。
物質を構成する分子あるいは原子は光のエネルギーを吸収することができる。ただし、受け取ることができる波長は、分子の種類によって異なる。かなり大まかな話だが、その理由は分子の大きさや形が様々だからである。また、どの波長の光がどの程度吸収されるかを測定することで、物質の性質を調べる分析手法を吸収分光法という。
要するに、ある物質に光を当てると、ある波長のものは吸収され、それ以外のものは透過する。
波長によって吸収のメカニズムが違う。遠赤外領域では、結晶のように規則正しく並んだ分子の揺らぎや、たんぱく質のような大きな分子の揺らぎが吸収の原因となる。水分子は隣り合った分子と水素結合でつながって集団を作るので、遠赤外線をよく吸収する。だから私は吸収分光法で、液体中やたんぱく質の周りにある水の集団の揺れ具合を測定して、分子がどのように並んで動いているのかを調べている。
今回の私の計画は、この研究を非平衡状態に広げるためのものである。非平衡状態というのは内部でエネルギーの散逸が起きている状態のことをさす。簡単に言うと、外界との物質の交換や熱の出入りなどにより熱力学的に不安定な状態のことである。物理学では平衡状態を扱う場合が多いが、生物を含む自然界では非平衡状態であることが多い。水の構造がこの両者の間でどう違うのかを調べることがこの研究のテーマである。審査で面白いと思ってもらえるとよいのだが。
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