先週の日曜日にTOEICを受験しました。TOEICは会話などのコミュニケーション能力を試すテストなので、難解ではないのですが、ゆっくり考えている時間がありません。リスニングの問題でよく分らなくて迷っているうちに次の問題が始まっている、ということが何度も続いて、出題のペースについていけなくなってしまいました。準備不足を反省しています。
国際会議では公用語として英語が使われていますので、研究者は英会話ができる、というのが暗黙の了解です。しかし、ほとんどテストされる機会はありません。必要とされながら、自主的な努力に任せられている、特に基準のない職業能力といえます。
私はアメリカでポスドクだったときに、英語の不勉強が骨身にしみました。不便というだけでなく、人様に迷惑をかけたくないという理由で、英語の勉強に力をいれています。そして自分の実力を知るためにも何か試験を受けるべきだと考えました。
TOEICの公式なホームページにある「TOEICスコアが表す英語コミュニケーション能力」というページには、470点以上(満点は990点。)で「日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる。」、730点以上で「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。」、860点以上で「Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる。」と書かれています。要するに470点あればサバイバルができ、730点である程度の仕事ができ、860点以上あれば問題なし、というところでしょうか。個人的な経験から言えば、少し甘い解釈ではないかという気がします。私は470点の英語力での日常生活を経験したくありません。
研究者の職業能力という観点から言うと、意見の異なる人を説得したり個人的な信頼関係を作るとなるということが仕事に含まれるとすれば、どれくらいあればよいものでしょうか。
ともかくも、私の目標は900点以上です。少なくとも800点は取りたいところです。一昨年に一度だけ受験したことがあり、スコアは740点でした。このときは何も準備をしなかったことを言い訳にしていましたが、今回は2度目なのでそれなりに実力が反映されているはずです。結果が出る一ヵ月後が楽しみです。(ここでお話できるような成績であればいいのですが。)
ところで、英語の上達にはかなり個人差がありますね。コミュニケーションを取りたいという欲求が強いほど上達が早いようです。その点、私はあまり向いていません。私は研究室にこもりがちで、仕事以外は食事と読書で時間をつぶせてしまうという性格が災いしているようです。もちろん読書は日本語です。私はしゃべらなくても比較的平気ですが、活字中毒なので一日読まないでいると苦しくなります。渡米したばかりのときは、わざわざ大学の図書館で日本文学の本を探して借り出してました。おかげで三島由紀夫や大岡昇平を新鮮な気持ちで読むことができましたよ。金閣寺に火をつけたり、ミンダナオ島の戦場をさまよったりというのが、一日で唯一の安らぎの時間でした。
こんなわけで私はアメリカに3年半もいましたが、英語はたいしたことありません。(多少ましにはなりましたが。)もし海外で生活するだけで英語が「ぺらぺら」になると思っておられるのでしたら大変な誤解です。経験した私が言うので間違いないですよ。ですから必要になってからあくせく勉強するよりも、普段からこつこつ勉強しておくほうが賢明というものです。
現在私は毎晩NHKのラジオ講座「ビジネス英会話」を夕食後に聞いています。一ヶ月にテキスト代の350円しか掛からず、ビニェットが結構面白くて、とてもお勧めです。ちなみに今週のテーマは「Paper Chase day」です。
それほど好きではないと言いつつも、私はこれまで英語の勉強に随分と時間をかけてきましたが、なかなかうまくならないものです。しかし世間には優秀な人がいるようで、短期間で成績が大幅に上がったとか、勉強しないでしゃべれるようになった、という話を読んだり聞いたりすることがあります。正直、自分の才能のなさにうんざりしますね。そんなときは、江戸中期の学者、新井白石の、学問の道での不幸な経験に対する言葉を思い出すようにしています。
こんなにまでして勉強してきたのは、(中略)いつも堪えがたいことに堪えることを心がけ、世間の人が一度することを、私は十度おこない、十度することは百度したからである。
「折りたく柴の記」 新井白石/桑原武夫訳
私は白石のような立派な人物ではありませんが、意志の強さを見習いたいと思っています。才能のある人が簡単に1回でできてしまうことでも、私は5回でも10回でも、できるまでやるほかないと思ってます。
それではまた。
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